NPO Science Communication ではメルマガにてメンバー二名によるマニ
フェストの評価を発表しました。
その後、春日による日本共産党のマニフェスト評価について、関係者の方のご
指摘に基づき、修正版を発表しました。
そのため、全容がやや判り難くなったと思われますので、ここに最終版を再掲
し、経緯の説明とともに掲載させていただきます。
また、以後も修正がありましたら履歴とともにこちらにアップさせていただき
ますので、よろしければ投票のご参考にご利用ください
- 目次 -
◆各党のマニフェストおよび政策集へのリンク
◆各党マニフェストにおける科学技術研究政策比較 1
檀一平太(NPOサイエンス・コミュニケーション)
◆各党マニフェストにおける科学技術研究政策比較 2 (Ver.2)
春日 匠(NPOサイエンス・コミュニケーション)
◆訂正までの経緯の説明
注)今回のマニフェスト比較はサイコムメンバー個人の意見を掲載したものであり、
NPOサイコムジャパン自体の共通見解を示したものではありません。また、サイコム
ジャパンは政治的には中立であり、このマニフェスト比較において、特定の政党を支
援するという意図もありません。科学技術研究政策に関心のある有権者が、マニフェ
ストを比較する際の道標を提供するというのが、本企画の目的です。
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各党のマニフェストおよび政策集へのリンク
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自由民主党 (http://www.jimin.jp/)
http://www.jimin.jp/jimin/jimin/sen_syu43/sengen/index.html
公明党 (http://www.komei.or.jp/)
http://www.komei.or.jp/policy/manifesto_saishu.htm
※パンフレットにはこれ以外に「当面する重要課題について」が記載されている。
(Asahi.com 参照)
http://www2.asahi.com/senkyo2003/manifesto/komei/4.html
保守新党 (http://www.hoshushintoh.com/)
http://www.hoshushintoh.com/seisaku/to_seisaku.html
民主党 (http://www.dpj.or.jp/)
マニフェスト:
http://www.dpj.or.jp/manifesto/index.html
政策集:
http://www.dpj.or.jp/manifesto/index/index.html
社会民主党 (http://www5.sdp.or.jp/)
http://www5.sdp.or.jp/central/topics/03sousenkyo/index.html
日本共産党 (http://www.jcp.or.jp/)
http://www.jcp.or.jp/giin/senkyo/03-senkyo/pdf/seisaku-dai.pdf
http://www.jcp.or.jp/akahata/aik2/2003-10-09/00_01.html
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各党マニフェストにおける科学技術研究政策比較 1
檀一平太(NPOサイエンス・コミュニケーション)
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総務省統計局が発表した科学技術調査報告
(http://www.stat.go.jp/data/kagaku/)によると、日本の科学技術研究費は産学官
総額で16.5兆円(平成13年度統計)であり、我が国のGDPの3%を占める重要
産業である。いくつかの政党がマニフェストの中で、「科学技術立国日本」あるいは
それに類する表現を用いて強調しているように、天然資源の少ない我が国において、
科学技術研究政策は国家の運命にかかわる重要事項である。しかしながら、先日、主
要6政党から発表された衆議院選挙公約マニフェストを見る限り、現状では、科学技
術に正面から向き合っている政党は非常に少ないと判断せざるをえない。景気対策、
福祉政策等と比べれば、日陰者の扱いである。とはいえ、われわれ科学技術研究の周
辺住民にとっては、科学技術研究政策は重要な関心事であり、この点に焦点を当てて
マニフェストを比較することも有用であろう。以下に独断を交えて、各党マニフェス
ト比較を展開する。
◎保守新党:
まず、科学技術研究政策を精神的に最も重視しているのは保守新党である。10の
重点政策の筆頭として、「ライフサイエンス・IT・環境・ナノテクノロジーの成長
4分野に代表される先端技術への集中投資」を掲げている。そして、次の世代のため
に「科学技術立国日本の創造」を明記している。しかしながら、具体的に目玉となる
ような政策は全く示しておらず、やや拍子抜けのする内容という感は否めない。も
し、重点政策の精神を反映して、ユニークな科学技術研究政策を掲げていたとすれ
ば、専門分野において政策立案能力のある、小粒の山椒的政党として独自の存在感を
示せたかもしれない。この点は、極めて惜しいところである。
採点:精神性はよいが具体的政策を欠く。総合評価30点。
◎自由民主党:
総花的政策の中で、しっかりと科学技術研究政策も押さえているという点はやはり
与党の利であろうか。内閣府直属の総合科学技術会議が発表している各種政策の中か
ら、4分野の重点研究領域、若手支援、ベンチャー支援、知的財産保護といったアピ
ール度の高い政策を効果的に散りばめており、極めて憎い演出を施している。さら
に、科学技術研究開発のほとんどは実際には民間企業で行われるという事実を踏ま
え、これを促進するために、税制上の優遇措置も謳われている。
これらの政策は「単なる総合科学技術会議政策の受け売りではないか」という批判
もあり得るが、そもそも内閣府直属の総合科学技術会議
(http://www8.cao.go.jp/cstp/)の政策が自民党の政策と一致してこそ政策の一貫
性が保てるといえるだろう。
意外に知られていない事実ではあるが、総合科学技術会議の設定した科学技術基本
計画(http://www8.cao.go.jp/cstp/kihonkeikaku/kihon.html)は現場の研究者が読
んでみれば、感涙するようなありがたい内容が書いてある。しかし、5年計画の3年
目である今年の状況を見渡してみるに、あまりこの基本計画は実現していないという
のが妥当な現状認識であろう。ところが、「科学技術基本計画を着実に実施する」と
いう宣言がなされており、具体的な政策を本気で実現することを目指すという姿勢は
示している。優れた具体的計画を着実に実行するという態度を示した自民党マニフェ
ストは科学技術研究政策に関する限りは突出した水準を示している。端的に言えば、
「総合科学技術会議の政策を支持するか否か」が自民党政策を支持するかいなかの判
断基準となるだろう。
採点:与党の利はあるが、内容は優れており、後は実現を望むだけである。総合評
価90点。
◎公明党:
残るもう一つの与党公明党に関しては、ユニークな科学技術研究政策を出してくる
かと密かに期待していたのだが、避けているのかと思われるくらい、言及が少ない。
創価学会の精神を反映すれば、ユネスコ世界科学会議の「科学と科学的知識の利用に
関する世界宣言」(http://www.mext.go.jp/b_menu/houdou/11/10/991004a.htm)で
宣言された「平和のための科学」といったような理念に基づいた、与党内でも一味違
う政策を展開できるのではないかと思うが、極めて残念な結果に終わっている。贔屓
目に見て、中小企業支援を目指している点が特徴と言えなくもないが、具体案は示さ
れていないため、大企業支援との差は明確ではない。これでは、与党内において、公
明党は科学技術政策については傍観者にすぎないと認識せざるをえないだろう。
採点:与党の一角を占めながらも貧弱な科学技術政策しか掲げていない。わずかに
中小企業支援の精神にかすかな光明あり。総合評価10点。
◎民主党:
「キャッチアップ型研究開発から独創的研究開発」、「知的財産戦略強化」、「人
材育成」、「総合科学技術庁の設置」あたりが民主党の科学技術研究政策の重点課題
と読める。このうち、前者2つについては、総合科学技術会議の網羅的政策に包含さ
れる範囲に収まっている。どの科学技術研究分野に重点をおくかについても、「選択
と集中」といった精神的態度を並べてはいるが、中身については「これから検討」と
いうことになるだろう。既に中身を明らかにしている、自民党政策からは遅れている
と言わざるをえない。
贔屓目に見れば、マニフェスト全体の論調から判断するかぎり、総合科学技術会議
の提案における、重点課題の配分比が変化すると予想される。例えば新エネルギー予
算は倍増させるとあったり、環境再生型の公共事業実現にはそれなりの研究が必要で
あるので、結果的には環境重視の配分となるであろう。とはいえ、やはり政権交代を
狙う政党としては、どこを減らしてどこを増やすか、予測や雰囲気で判断させない、
明確な政策提示が必要である。
人材育成についてはかなり明確な差がある。まず若手研究者育成に関して、自民党
政策は若手枠の予算倍増を謳っているが、民主党は研究機会に恵まれない研究者の雇
用流動化に力点を置いている。また、奨学金制度を改善して、誰しもが大学、大学院
教育を受けられるような制度を提示している。理数教育の強化についても触れている
が、共産党、社民党の方が、教育面については、より具体的な政策を提示している。
全体的に、現行制度での弱者救済といった色彩が強い政策である。
最も特色のある「総合科学技術庁」の設置については、判断に迷うところだろう。
「庁」であって「省」ではない。形式的には、旧科学技術庁を復活させるだけとも考
えられる。民主党が主張するような科学技術研究政策の一元化が「庁」で可能なのか
どうか。競争的研究資金を獲得する側の意見としては、現実的には農水省系の独立行
政法人、生研センターや経産省系の独法、NEDOなどは、文科省に比べて萌芽的な研究
にも高額の資金を援助するという印象がある。多様な競争的資金の授与機関が存在す
ることで、文科省が見逃した研究が救われるということがあったりする。総合科学技
術庁の誕生は、競争的研究資金の一元化よりは、競争的資金授与機関自体の競争激化
をもたらし、結果的には多様な研究が援助されるという効果をもたらすであろう。
マニフェスト全体の論調からすると、民主党政権が実現すれば、「脱官僚」主義の
徹底により、総合科学技術会議の各種政策が実現する可能性は高くなるだろう。とは
いえ、そのようなシミュレーションはマニフェスト比較においては邪道である。総合
科学技術会議の政策としてとはいえ、自民党がかなり詳細な科学技術研究政策を示し
ている一方で、それに不満がある場合の受け皿的な政策しか提示できないというので
は、政権交代を狙う野党の姿勢としては物足りない。
採点:期待感は持てるが、政策の具体的な内容は乏しい。自民党政策に反対する場
合の受け皿としては、妥当かも。総合評価60点
◎日本共産党:
日本共産党のマニフェストは極めて大部であり、読むのにひと苦労であるが、科学
技術研究自体に関する政策は特に見当らない。いくつか散在する関連政策で特徴的な
のは、「脱原発、代替エネルギー開発」である。しかしながら、この点においては
「環境税の導入」など、具体的政策を提示している。また、なぜこの政策が必要かと
いう理由を丁寧に(丁寧すぎるほど)解説しており、とても親切である。また、大学
教育に関する政策もかなり詳細である。「国立大学法人法」については明確に反対姿
勢を示しており、大学における学問の自由を主張している。また、学費削減、奨学金
拡充についても、民主党よりさらに踏み込んで、現行システムでの弱者保護の姿勢を
打ち出している。こういった問題に対する解決を期待する方々には、アピール度の高
い政策と言えるだろう。
もし、科学技術研究政策という枠で政策提示を義務化すれば、日本共産党はかなり
細かい独自のマニフェストを提示すると思われるが、やはりこれもシミュレーション
にすぎない。しかしながら、他分野の政策の質、説明責任等を考えれば、日本共産党
の政策立案能力はかなり高レベルにあると言えるだろう。日本共産党の政策が10年
経つと自民党の政策にいつの間にか取り入れられたりすることもあるので、意外な火
付け役として、今後の科学技術研究政策強化を期待する。
採点:今回は書くのを忘れちゃったのかな。総合評価60点
◎社会民主党:
社民党が科学技術研究政策は、高度先端医療の拡充の一点強調型である。少規模政
党としては正しいあり方かもしれない。もしこの政策が実現すると、この分野に片足
を突っ込んでいる私の研究費はきっと増えるだろうと思わず妄想を抱いてしまった
が、他の分野の研究者にはありがたくない話であろう。総論を省略してディテールで
斬新な政策を展開する姿勢は、極めて過激である。科学技術研究政策につながるもの
として、教育政策は非常に独創的であり、評価に値する。「教育予算をGDPの5%と
する」という案は各党マニフェストの全体を見渡してみても、かなり目立つ主張であ
る。
ところで、アメリカのブッシュ政権とはどうにも相性の悪そうな社民党ではある
が、次期アメリカの科学技術研究政策と思しきNational Science Foundationの評議
会による試案
(http://www.nsf.gov/nsb/documents/2003/nsb0369/nsb0369_drft.doc)によれば、
アメリカの科学技術研究政策は教育重視による自国の科学技術研究レベルの底上げと
いう方針へとシフトしており、社民党の政策と方向性を共にしている。偶然とはい
え、面白い現象である。
採点:科学技術政策事態は極端ではあるが、総合的に判断すると科学技術研究振興
につながる優れた教育政策あり。総合評価50点
このように科学技術研究政策に焦点を絞ってみると、総合科学技術会議を利用でき
るという「与党の利」を考慮しても、質においては自民党政策の独り勝ちという状況
である。おそらく今回の選挙では各党が科学技術研究という要素を見落としていたと
いう面もあるだろうが、見落とすということは、とりもなおさず、それを支える議員
がいないという状況を反映しているとも言えるだろう。少なくとも、次回の衆議院選
挙までには、政党独自のまとまった科学技術研究政策を提示できるよう、自民党以外
の各政党の奮起を期待したい。特に、民主、共産党に関しては、詳細な科学技術政策
を展開しうるポテンシャルが感じられる。将来、こういった政党が奮起して、高いレ
ベルで科学技術研究政策を競い合えるような展開を期待する。
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各党マニフェストにおける科学技術研究政策比較 2
春日 匠(NPOサイエンス・コミュニケーション)
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総論:
これまで日本の選挙における政治家の政策は「公約ならぬ願い事リストである」と
言われてきました。誰でもそうなればいいと思うけれども、実現の方法が不明確で、
また時々相互に矛盾するような主張が羅列されるだけだ、というわけです。これで
は、たとえ公約を破ったとしても「努力したが及ばなかったのだ」とか「状況が変わ
ったのだ」という言い訳が許されてしまいます。これでは選挙と言ってもただの白紙
委任と対してかわりがありません。
そこでマニフェストの登場です。マニフェストはイギリスの選挙に由来する言葉
で、イギリスでは総選挙のたびに各党が冊子を発行します。これは50〜60ページほど
で、数値やグラフなどで政策目標が明示してあり、2.5ポンド(約500円)ぐらいで購
入するようになっているということです。この意味では、日本の各党が今回の選挙で
配付している20ページほどのパンフレットよりも、社民・共産がそれぞれ作成して販
売している冊子のほうがイギリスのマニフェストに近いイメージかも知れません。
日本でマニフェストという言葉が強調されるのは、単なる「公約」よりも具体的な
数値目標などの点で明確なのと、政党ごとの拘束がイギリス型に大きい、という点を
強調したいと言うことでしょう。
ちなみにイギリスで発行されるマニフェストの部数は、労働党、保守党共に10万部
程度とのことであり、イギリス国民すべてがこれを精読するわけではないようです。
しかし、新聞などのメディアがそれぞれの支持政党を明確にうち出し、マニフェスト
の論点を議論します。中立を装いつつなんとな〜く支持を臭わせるだけの日本のメデ
ィアとはだいぶ状況が異なるようです。
イギリスは伝統的に二大政党制で、連立内閣と言う歴史がほとんどない国です。国
会議員による選挙ではなく王ないし女王が直接に首相を任命しますが、「君臨すれど
も統治せず」をモットーとする王ないし女王は慣例にのっとり、自動的に第一党の党
首を首相に任命します。また、政党の支配力が強く、個別の選挙区における候補は公
募などでほぼ自動的に決定されるイギリスでは、マニフェストの徹底は比較的容易で
す。これに対して、各候補がそれぞれの強力な支持母体を持っており、また連立を基
本とする日本の議会政治で、マニフェストが有効に機能するかは疑問の残るところで
す。
この点は事後の検証が重要になってくるでしょう。ちなみにイギリスでは(←すっ
かり出羽守)政府与党も検証レポートを出しますし、BBCなどのメディアも「BBCの調
査ではマニフェストに229の約束を見いだした」という感じでマニフェストを列挙し
て、それぞれに「約束達成(pledge met)」、「途上(On course)」、「議論のあ
るところ(Debatable)」などと論じていきます。来年の今ごろには各メディアがそ
れをやってくれることが期待されますね(明確に切り分けられる約束は各党とも、
200も無いような気はしますが)。
とは言っても、各党がマニフェストを出すようになったのは大変喜ばしいことで
す。少なくとも、その政党が約束したことを達成したか、チェックする素材はできた
と言うことです。選挙という意味ではやっとまっとうな民主国家に近づいたと言えま
しょう。そういう記念碑的な選挙でもあることから、科学技術、高等教育、NPOの三
点から、やや甘めにマニフェストとしての完成度を採点してみました。ただ、投票と
なると、これに戦略的な要素が入ってきますが、ここではそれは問いません。
それと言いたいのは、現状ではやはり手に入り難いのが難点です。また、各党のウ
ェブサイトを見てもどこでマニフェストが閲覧できるのかとか、どこまでが明確な
「約束」でどこからが単なる「解説」なのかが判り難い状況です。まぁ、ウェブサイ
トの作り方がへたくそなのはヨーロッパ人も負けてはいないですけど(笑)。あと、
野党各党は「マニフェスト」とされるパンフレット以外に詳細を詰めた追加の政策集
を出しており、そこまで読まないと全容が判らないようになっているのも、理解を妨
げるところです。次回は是非一冊にまとめて欲しいものです。
いずれにせよ、マニフェストができたところで、当然次は国民にそれを批判的に読
みこなす能力が問われるようになるわけです。埼玉の参議院補選ではそれが面倒くさ
かったのか投票率が下がってしまったわけですが、それではちょっと困りますね。
ところで、なにかと批判の多い政党助成金ですが、イギリスなどにも政党助成金は
あるようです。しかし、これはマニフェストを作るためのお金なので、シンクタンク
をつかったり、政策研究スタッフを雇ったりするためのお金なのですね。地元周りや
年賀状のあて名書きのためにつかっちゃ拙いわけです。また、与党は国内最強のシン
クタンクである中央省庁を使えるため、政党助成金は与党には配分されないとのこと
です。
前置きが長くなりましたが、各党の例を見る前にまとめると、実は科学技術行政に
ついては、各党ともさほど方向性に差はありません。基本的には環境に配慮しつつ産
業基盤を拡充していくと言う方向性は否定しがたいようです。明確に争点となってい
るのは原子力発電で自民、保守新党は積極推進派で、民主は消極派(暫時撤廃)、社
民・共産は否定派です。公明は言及がありません(逃げた?)。賛否そのものはここ
では問いませんが、推進を打ち出す場合は予算規模や期間、撤退条件などがもう少し
明確になる必要があるでしょう。
高等教育については、ブレアのメッセージが「新労働党には三つの重点目標があ
る。それは教育と教育と教育である」と大見えを切ったのを思い出せば、各党ともも
う少し言及が欲しいところです。
NPOについては、各党の態度はさまざまで、ここはけっこう評価が別れるポイント
になります。
◎自民党:
最も数字が具体的な点は一見評価できます。しかし、これはこれまでの路線を踏襲
しているだけなのでいわば当然であって、文部科学省による作文の引き写しにしか見
えないと言う点ではやや不満が残る内容です。
野党のマニフェストは理想論で構いませんが、与党のマニフェストはこれまでの政
策と比較評価して、より辛く点数をつけなければいけません。そういう意味では、こ
れまでの総括と言うか、反省がない点に不満が残ります。
例えば、競争的研究資金とかベンチャー育成というのはすでに90年代の末から繰り
返し言われてきたところで、そのキャッチフレーズがどの程度実効的だったのか、ど
こが不十分だったのかと言う議論が聞きたいところです。もちろん、「競争的研究資
金」と掛け声をかければ資金運用の効率性が達成されるわけではありません。ある研
究によれば、日本は高額な実験機材の稼働率が先進国最低だそうです。これは、単年
度会計と重点化予算という事情により、必要もない機材をとりあえず買わざるをえな
いという状況が頻発しているからでしょう。また、大学院生や研究者によるヴェンチ
ャーという話も、単純にTLOを整備すればいいというものでもないでしょう。このあ
たりは反省をふまえた議論が必要なように思われます。とはいっても、科学技術に関
して言えば、総じて数値は明確ですし、方向性も理解しやすいものになっています。
マニフェストとしての現実性は最も高いでしょう。科学技術ガバナンスという観点か
らは「リスク・コミュニケーション」という文言を明示したのは高得点です。
一方、高等教育に関しては突然具体性を欠如させ始めるのはやや困った点でしょ
う。法科大学など専門家教育の推進や、「競争的環境の中での大学改革」という文言
は、マニフェストとして今一つですし、若手としては「それだけかい」と突っ込みた
いところです。
「NPOが活躍する経済社会の実現」もちょっと不満が残ります。
採点:科学技術の推進と言う観点からは非常によくできているが、そのベースとな
る人材育成と言う観点が弱いのが難。60点
◎民主党:
「マニフェストの民主党」で売っているだけあって、全体を見れば、
Plan-Do-Check(計画して、やってみて、確認する)という基本に比較的忠実に創ら
れています。まだまだ曖昧な点は散見されますが、さすがに今回の各党の中では抜き
出ている印象は受けます。個人的には政権交代を実現して貰いたいところです。た
だ、政策としての一貫性には不満が残り、タカなんだかハトなんだかよく判らない目
標が羅列されている印象は受けます。都市型政党としては仕方のないところでしょう
が、政権をとった後党内がマニフェストで結束するのか、やや不安が残るところで
す。余談ですが、自民党のオヤジ・アイドル路線の向こうを張ったつもりか、管氏の
写真がやたらと登場するのはどうにかして欲しいです。一枚あれば結構。
科学技術政策については、目標設定に際しての用語だてはうまいと感じさせられる
でしょう。「モノへの投資から人への投資へ」 なんて、ちょっと期待させるものが
あります。自民党との最大の差は、インフラと人材へのバランスのとれた目配りでし
ょうか。難点は、数値目標などが曖昧で、マニフェストとしては今一つ完成度が低い
点です。
教育についてもやや曖昧さが残り、国立大学の制度問題や、全体の教育費について
も言及が欲しいところです。無利子貸与額を50パーセント引き上げてもそのぶん私学
助成金などが「文部科学部門の予算の精査」で削減されたりして、結果として授業料
が上がったら意味がないわけですしね。ただ、『「学習者・研究者本位の大学」、
「創意ある不断の改革を現場から自発する大学」、「社会に開かれ、社会と連携・協
働する大学」をキーワードに、「象牙の塔」から「時代が求める人づくり・知恵づく
りの拠点」として大学改革を進めます』と言っているあたりは、非常に期待が持てる
ところです。
国民の関心の高いであろう食料安全保障については、内閣府設置の「食品安全委員
会」への一元化が謳われています。自民では委員会と関係省庁の関係がよく判らない
ので、この点は評価できるところでしょう。
ところでNPOを運営する身としては「NPOの6割に税制優遇が可能となるような
NPO税制の仕組み」は悪くないですね。税金を払うような規模のNPOが6割もあるのか
という素朴な疑問は残りますが。
採点:乗せるのがうまいだけな気もするが、十分支持できるものに仕上がってい
る。あとは政権をとるだけ 80点
◎公明党:
まず第一にウェブサイトをチェックして、どこからどこまでが「マニフェスト」と
称しているものなのか、非常に理解しがたいのです。マニフェストという項目をクリ
ックして、「マニフェストを発行しました」というニュースを見せられる(しかもそ
の記事中にはマニフェストへのリンクがない)のはちょっと興ざめでしょう。マニフ
ェストの重要性をうち出したのは民主党と並んで早いが、広く告知しようという意志
や工夫においては、民主党にだいぶ水をあけられている感じで、まず失点。
科学技術行政と言う観点から見れば、ハイテクにフォーカスすることで500万人の
雇用創出と言うのは自民と共通ですが、具体的な方法論は自民以上に曖昧です。単純
に大学院生を増やすことでは達成できないと言うのは自明に思われます。数値目標な
ど、マニフェストとしての体裁を整えていないので、評価できない感じですね。
高等教育については、ロースクール問題は頑張ると言っていますが(なんか下心を
感じなくもありませんが)、意外なほど言及がありません。「希望者全員が受けられ
る奨学金制度とします。また、海外留学する学生を対象とした制度の創設」などが謳
われています。
これもちょっと以外ですが、国内のNPOについては活用を提唱するのみで、振興策
は特にありません(海外で活動するNPOにODA予算を5%振り分けるという目標はあ
る)。総じて、論評する要素に欠けると言う感じです。
採点:正直期待外れ。もっと頑張りましょう。 30点
◎日本共産党(評価 Ver.2):
非常に論争的で、特に与党との差異を強調している点は評価できるでしょう。現状
分析が各党の中で最も明快です。ただ、近年の共産党の「現実路線」を反映してか、
現実と理念の間でややどっちつかずになっている分、明快さを欠いている点は否定し
がたいと言えます。よく考えると150年以上不変の元祖「マニフェスト」をお持ちな
わけで、そのへんとの「不整合」ってどうなのか、と…。
自然エネルギーについてを除けば、科学技術政策はほとんどありません。ガバナン
スという意味では予防原則や拡大生産者責任制度など、わりとEUのスタンダードを意
識していることが伺えます。バイオやナノについても他の問題同様、与党の政策に喧
嘩を売ってくれるともう少し面白いものに仕上がったと思うのですが、言及を避けて
いるように見えるのは残念です。
高等教育については明確に「小泉内閣の大学リストラをやめさせ、国民の立場にた
った大学改革をすすめる」とあり、法人化反対の方向で、どの党よりも明確な路線を
うち出しています。
「大学予算を欧米なみに引き上げ、条件整備への国の責任をはたす」とし、財源と
しては公共事業の削減をあげている。数値目標としては「高等教育の八割をになう私
立大学に対して経常費二分の一の国庫補助をめざし」とある。また、「大学院生や若
手研究者への支援を強め、劣悪な研究条件を抜本的に改善します」ともある。「大学
改革への財政支援にあたっては『支援すれども統制せず』の原則を貫き」「国民の学
費負担を減らす」というのは、高等教育に対して本来当然の姿勢といえますが、現今
の社会情勢では理解されがたい部分もあるでしょう。ただし、それを理解させるのは
むしろ政党ではなくて大学自身の役目です。その意味で、大学を信頼したうえで、大
きな宿題を課していると言え、決して大学に甘い政策ととらえるべきではないでしょ
う。
若年層の雇用問題について最も積極的な党である点も高等教育政策という観点から
も評価できます。両者の間の有機的関連性が示せるとなおよかったでしょう。
ちなみにNPOについては今回は言及無し。まぁ、お嫌いでしょうから…※。
※NPOという発想そのものがネオリベラリズム的な「小さな政府」と民活と言う時
流に乗って発展してきたものであるという歴史を考えれば(そしてその線で保守系政
党ですらNPOを活用しようと言う時代ですので)、すべてのNPOがよいものだと言う
わけでもありません。
第一に、NPOというのは、日本全国に誰でも公平にサービスを受けられるかという
観点からは問題の残る手法です。
またサービスを提供する側から見ても、NPO導入の目的の一つには人材の流動性を
促進すると言うことがあるわけで、高度な専門職や博士号取得者層にとっては有利で
も、わりと量産されがちな(福祉系に多いような)資格の保持者にとっては、逆に職
能訓練は自己責任で行わされ、雇用は不安定になりと、かならずしもNPO化は利益に
ならない部分もあります。
そんなことまで勘案すれば、個人的には共産党まで単純に「振興」を言うのではな
く、じっくり議論したのちに追い追い発展性のある立場を表明していただくことを望
んでいます。
採点:高等教育政策の明快さと独自性を評価して 60点
◎社会民主党:
実は、イメージで損をしていますが、マニフェストは非常に詳細で、明確です。ま
た、基本姿勢がしっかりしているので、政治信条に共感できるものがあれば、自民や
民主のような党内不一致に由来すると思われるごまかしがないぶん支持しやすいでし
ょう。
ただし、科学技術政策という意味では、予防原則をうち出している点が眼を引く程
度です。科学技術立国的な視点はほとんど無いので、これまでビッグサイエンスを推
進してきたような立場の人が支持するのは難しそうです。一方で、自然環境の保護や
有機農法への転換、農業の振興などといった、ややローテクな分野ではどの党よりも
明確なヴィジョンをうち出していますから、古典的な農学や開発・環境系の研究者に
とってはチャンスが広がるかも知れません(っていうか、人類学者としても期待して
しまいます)。
教育について、明確な数値目標(10年計画でGDP費5%を達成。高等教育については
1%)をうち出しているのが眼を引くところです。給費奨学金制度は「検討」となっ
ていてやや曖昧なのが残念。「図書館・博物館の学芸員、スポーツ指導者、市民ボラ
ンティアなど、人的、物的条件を整備」という目標は大学院生などにとって歓迎でき
る目標です。
NPOとして歓迎できる政策は、社会的責任投資、地域通貨の導入などです。また
「自治体を「市民の政府」として、市民の自発性に依拠し、NPOやボランティアを
はじめとする市民との連帯と協働を推進するコーディネート機関に転換」というふう
に言い切っているのは、自治体の役割の規定としてはどの党より踏み込んでいると言
えましょう。社民と言えば「大きな政府」推進派ですが、全体として「一番税金が集
まらないが、金もかからない」という意味で、社民主義の範囲内ではけっこう小さな
政府としてまとまっているという印象を受けます。これはこれで是非実現を見てみた
い社会実験なので、この党のマニフェストが試されることは事実上無いであろう点が
惜しまれるところです。
採点:整合性と具体性という意味でピカ1。70点。
◎保守新党
あまり見るべきもの無し。重点領域などは自民党とかぶるが、なぜか「宇宙等先端
技術」が追加されている。「環境ホルモン対策」も謳われているが、科学者はそれを
どう評価できるか?
防衛や公共事業などの部分で、自民党の保守的な部分だけを純粋培養したような党
なので、科学技術と言う意味ではさほど差はでないし、あまり勉強している感じも無
い。教育についても教育基本法の改正や学力の強化などに集中で、「院生の待遇改
善」とかいうと精神論で切り抜けろ、とか言われちゃいそう。ついでに言えばNPOに
ついても、「NPO等による地域活性化の取り組みを支援し」「NPO等の活用によ
り、地域の文化・スポーツ活動を盛んにし」「NPO等との連携を強化し、地域によ
る自主的な 犯活動が促進される」等々、行政にとって都合の良いものである(にし
たい?)という風にだけ見られているようで、正直気分が良くない。振興策の一つも
つけて欲しいものである。
採点:有り体に言えば評点外。マニフェストという言葉から勉強し直しましょう
20点
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訂正までの経緯の説明
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訂正までの経緯の説明
◎日本共産党の関係者の方から、私(春日)のマニフェスト評価に誤りがあるとご指摘
を受けました。
主要なご指摘を、私がまとめると三点です。
その1、大学問題について「言及無し」としたのは誤りである
その2、研究政策については参議院選挙のときの政策を参考にされたい
その3、「NPOが嫌いでしょうから」は誤解である。
◎ということで、その1については確認しましたところ、私の明快な誤りでした。
法人化反対と支出増大の方向で明確な路線をうち出しておられます。
また、支出計画なども明確で、評価できるものです。
この点、読者のみなさまと関係各位へのおわびとともに訂正させていただきます。
また、評点も20点追加して、60点とさせていただきます。
その2についてですが、今回の評価はあくまで「政党」の評価ではなく、科学技術
等を中心に見て見たときのマニフェストの整合性や明快さの評価ですので、これまで
の主張や実績などは評価外とさせていただきました。
マニフェストは有権者との契約ですから、書いてないことは政策として評価できな
いことです(事後評価の時に「マニフェストにないけど考えてたし、達成項目にいれ
ちゃえ」となったら収拾がつきません)。
あくまで、こういうのを付け加えてくれると次回の選挙でより議論しやすくなる、
というような要望としてお読みください。
というわけで、この項につきましては、変更なしとさせていただきます。ご理解頂
けたら幸いです。
その3については、確かにちょっと言葉が滑っている側面はありますが、あくまで
評者の印象を述べたもので事実言明とは異なるので、このままとさせていただきます
が、誤解を招く表現であるのは明らかなので、注で趣旨を述べさせていただきます。
個人的には、NPOの運営に関わるものとしては振興策も欲しいところですが、NPOと
いう思想そのものの抱える問題点を考慮すれば、(長年の左派としては)共産党には
硬派な立場を貫いて欲しいと言う矛盾する思いもあります。
ということで、高等教育政策についてのみ大幅に変更させていただきまして、日本
共産党編を以下のように訂正させていただきたいと思います。
また、重ねて読者のみなさまと日本共産党の関係者の方にはおわび申し上げます。