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設立趣旨書原案

NPO法人「サイエンス・コミュニケーション」設立趣旨書原案
2003年8月21日 版

設 立 趣 旨 書

 1 趣 旨
 近年、日本における科学研究を取り巻く環境は大きく変化しつつある。大学の研究は、政府や産業界からはより産業に役立つ研究をすべき、よりレベルの高い研究をすべきとの強い要請を受け、産業界の研究は、利潤追求と安全性や環境との調和を要求されている。公的研究機関は基礎研究と商用研究の狭間でその存在意義が問われ、政府は大学や産業界から、それぞれにとって効果的な研究環境の整備を求められている。

 しかしながら、研究システム改革の熱は高まるものの、矢継ぎ早に出される研究者を対象にした改革を巡る議論には、個別の研究者、学生の意向が適切に反映されていない。他にも科学政策決定に際し、研究を担う個々の研究者の考えが適切に反映されているとは思えない事例は少なくない。このような事態が生じるのは、研究に関わる異なった立場の当事者同士のコミュニケーションが適切に行われていないからではないだろうか。
こうした現状のなか、科学技術庁(現文部科学省)は、平成12年度の科学技術白書のなかで、

我が国においても、科学技術にかかわる活動を行うNPOやNGOがその活動を活発化し国民生活に密着した科学技術活動を行っていくことによって、科学技術に対する国民の意見の集約を図り、科学技術行政における意思決定に対してそのような意見を反映させていくことが期待される。
(第4節 国民の手にある科学技術より)


と述べている。異なった社会セクターに属する研究者、市民、行政担当者が研究に関する情報や意見を共有し交流することで、社会の合意を得た科学技術政策を立案し実現することの重要性が行政内にも認識されつつある。

 他方、科学研究の成果が市民生活を維持する上で非常に重要なものになるにつれて、科学研究と社会の関係が問い直されようとしている。市民を無知であるという前提で科学知識を押し付けるような態度は、もはや時代遅れであると言わざるを得ない。理科離れや先鋭化する科学研究の知に対する市民の厳しい目を前に、わたしたちは今、市民が欲する科学知識とは何か、科学知識をいかに市民と共有するか、市民と科学との関係をどのように構築するのかを考える必要に迫られているのである。

 こうした現状を考えると、科学研究の知を扱う様々な場面において、立場の異なった人々が科学研究の知を題材に情報交換し、意見を言い、双方向に交流すること、すなわち科学研究の知を通じた双方向交流(科学コミュニケーション)を促進することが、これからの科学研究及び市民社会に不可欠な要素になっていくのではないだろうか。

 そこで私たちは特定非営利活動法人サイエンス・コミュニケーションの設立を宣言する。サイエンス・コミュニケーションは、科学政策や研究システムの立案の際忘れ去られがちな若手研究者、大学院生、個々の研究者の意見を集約し、それを行政や研究機関などに伝えることによって、研究者が思う存分研究できる研究環境の実現を目指す。個々の研究者がその才能を存分に発揮することは、社会にとってもプラスになるからである。

 同時に私たちは、科学研究者と市民、あるいは科学研究者同士の科学コミュニケーションを推進したいと考えている。科学研究者の表現スキルを向上するような活動を行うと同時に、科学研究者と市民がダイレクトに交流できる場をつくることによって、科学技術に起因する問題、あるいは科学技術によって解決されるべき問題について議論し、市民が科学研究者に要望を出せるような公的な場を創り出す。そのことによって、大学・研究機関と社会の利害や関心が離れてしまいがちな現状を打開し、科学技術の問題解決能力を促進することを目指し、同時に大学・研究機関に対する社会の関心を向上させることを目指す。

 サイエンス・コミュニケーションは大学、市民運動、企業、政府組織など社会の多様なセクターとの共同でこうした事業に取り組む必要がある。事業の安定性、継続性と組織の独立性を維持しつつ、これら多様なセクターとの提携事業などの協調関係を築くためには、あるいは事業を透明化し、説明責任(アカウンタビリティ)を果たし、事業の公益性と公正性を維持するためには、特定非営利活動法人という活動形態が相応しいと考えている。

 私たちは以上のような活動を通じて、科学研究の知が社会に生かされる、「知を駆動力とした社会」の構築に貢献したいと考えている。

 2 申請に至るまでの経過

1998年2月 研究者の研究環境や科学政策などを議論する研究問題メーリングリストが開設される。
2001年11月 研究問題メーリングリストでの議論を元に、イギリスの科学雑誌Nature誌に投稿、掲載される。
2002年1月 NPO法人「研究問題」(仮)設立準備委員会が結成され、法人化に向けた準備がはじまる。
2002年6月 法人の名称を「サイエンス.コミュニケーション」に決める。
2002年11月 ウェブサイトを開設する。
2003年7月5日 設立総会を開催する

  平成15年7月5日

特定非営利活動法人 サイエンス・コミュニケーション
設立代表者 
氏名 林 衛

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